ご訪問、ありがとうございます。
「特許を取得してみたい!」という方に向けて、易しく説明する記事を書きました。
弁理士による記事です。
・個人発明家、
・アイデアで起業したい方
・小規模事業主の方、
などが対象です。
お金儲けではなく、「歴史に名を残したいから特許を取得したい」という方でも大歓迎です。
A:
1.はじめに
2.自己紹介
3.費用について
4.きちんとしたサポートにこだわる理由
5.発明を他人に話すって、すごいこと
6.特許出願する必要があるのか悩んでいる方へ
7.特許の費用は、見合うか?
8.「アイデアを教えます」では売れないが、特許権になれば売りやすい
9.相談を早くした方が良い理由
10.個人の発明に慣れている弁理士は、意外と少ない
11.特許にすべきか実用新案登録にすべきか
12.特許?実用新案? どちらも「新規性」と「進歩性」が必要
13.実用新案権の行使には注意が必要
14.特許取得までのだいたいの道のり
15.早く特許を取りたい場合は?
16.自分で特許出願できるか?
17.守秘義務のない「〇〇発明相談」に行くのは要注意です。
18.先行技術調査について
B:
1.気を付けて頂きたいこと
2.お問い合わせ
3.先行技術調査
4.役立つリンク
5.個人発明の特許取得の例
はじめに
何か良いアイデアを思いつきました?
それで、
「できれば特許を取りたいな」
と思って、ネットで検索して、ここへ辿りつかれたのでしょうか?
「特許に興味があるけど、どうすれば良いか分からない」と言う方ですか?
それならば、私がお役に立てるかも知れません。
あなたの素晴らしい発明を、きちんとしたやり方で、特許の取得まで導きます。
自己紹介
私は、弁理士です。
知財全般の仕事をしています。
発明って面白いですよね。
私は、面白いアイデアに接するのが大好きです。
発明は基本的に、これまでに無かったアイデアです。「あっ」と驚くものです。
いつもわくわくし、新鮮な気持ちになります。
発明には、個人の発明から、中小企業の発明、大企業の発明などがありますが、大企業の発明といっても、結局は、個人の頭から出てきたものです。
人間の頭って、すごいですよね。
私はこれまでたくさんの発明に出会って来ました。そして、特許の取得をお手伝いしてきました。
特許性が無さそうな発明でも、あれやこれやと理論を積み上げて、審査官を納得させて、特許にしてきました。
大企業の発明も扱いますが、個人の発明も楽しく扱ってきました。
経験上、感じていることがあります。
それは、
「特許を取ってみたいけれど、どうして良いか分からない」
という個人の方が結構な数いらっしゃるということです。
そのような方の中には、きちんとしたサポートを望まれる方がいます。
ですので、一定の需要があるかなと思い、このような記事を作成してみました。
費用について
まずは、気になる費用についてです。
発明をきちんと特許出願しようとすれば、それなりの経験が必要ですし、労力がかかります。
私は、きちんとしたサポートをしたいので、格安ではちょっと引き受けられません。
「格安な弁理士」をお探しの方は、申し訳ありませんが、他を探してください。
私は価格競争をしたくありません。
私の仕事は、同じものを大量生産する仕事ではありませんので、格安では提供できません。
もちろん、だからと言って、労力以上に高い報酬を頂くこともありません。
依頼者にとっては、費用が掛からないに越したことはないので、ご依頼の内容を良くお聞きして、作業量に見合った報酬を頂くことにしています。
すべて、事前に費用をお知らせいたしますので、後から勝手に高い金額を請求するということは致しませんのでご安心ください。
ここに、おおよその費用を掲載しますので、ご参考になさってください。
例① 特許出願
発明の内容:ハンガー(難易度:低)
(資料が十分揃っており、発明の内容が複雑ではなく、すぐに書類作成に取り掛かれる場合)
出願書類:図面3枚、明細書4ページ、請求項3つ
弁理士費用 | 125,000円 |
消費税(10%) | 12,500円 |
印紙代 | 14,000円 |
合計 | 151,500円 |
例② 特許出願
発明の内容:工具(難易度:低)
(資料が十分揃っており、発明の内容が複雑ではなく、すぐに書類作成に取り掛かれる場合)
出願書類:図面5枚、明細書6ページ、請求項4つ
弁理士費用 | 190,000円 |
消費税(10%) | 19,000円 |
印紙代 | 14,000円 |
合計 | 223,000円 |
例③ 特許出願
発明の内容:ドアの防犯用具(難易度:中)
(資料が十分揃っており、すぐに書類作成に取り掛かれる場合)
出願書類:図面5枚、明細書6ページ、請求項5つ
弁理士費用 | 260,000円 |
消費税(10%) | 26,000円 |
印紙代 | 14,000円 |
合計 | 300,000円 |
例④ 実用新案登録出願
発明の内容:文房具(難易度:低)
(資料が十分揃っており、発明が複雑ではなく、すぐに書類作成に取り掛かれる場合)
出願書類:図面2枚、明細書3ページ、請求項2つ
弁理士費用 | 150,000円 |
消費税(10%) | 15,000円 |
印紙代 | 20,900円 |
合計 | 185,900円 |
例⑤ 意匠登録出願
意匠の内容:スマホカバー(難易度:低)
出願書類:図面7枚
弁理士費用 | 55,000円 |
意匠図面費用 | 35,000円 |
消費税(10%) | 9,000円 |
印紙代 | 16,000円 |
合計 | 115,000円 |
例⑥ 特許出願
発明の内容:メール配信システム(難易度:高)
出願書類:図面12枚、明細書14ページ、請求項10つ
弁理士費用 | 456,000円 |
消費税(10%) | 45,600円 |
印紙代 | 14,000円 |
合計 | 515,600円 |
きちんとしたサポートにこだわる理由
個人の発明の特許取得の方法は、企業の場合とちょっと違います。
企業の場合は、発明者は開発部門におり、特許出願は、法務部や知財部が担当します。
企業の発明は、例え社員の発明だったとしても、基本的に、会社のものです。会社がその発明を「処理」します。つまり、会社が特許出願の作業をします。
(なお、「特許出願」のことを、一般的に「特許申請」と言うこともありますが、同じ意味です)
一方、個人の場合は、特許を取得したいなら、自分で動かなくてはなりません。自分で、何とかしなければ、何も始まりません。
しかし、特許の手続きは、とても煩雑です。
専門知識の無い個人では、自分で行うには限界がありますよね。
それで、どこかに相談に行きたいところですが、普通の特許事務所に行くのは、なかなか敷居が高くて、ためらうと思います。
億劫ですよね。
私も実は、弁理士になるずっと前、すごく昔に、ある発明を思いつきました。そして、某団体に相談に行ったことがあります。
とても、どきどきしました。
しかし、残念ながら、大したアドバイスは頂けませんでした。
「個人や素人には冷たい世界なんだな」と思ったものです。
それから、弁理士という職業を知り、弁理士になり、経験を積んでいきました。
弁理士になってからしばらくは、企業からの大量の特許出願ばかりを担当し、個人の発明を扱うことはしていませんでした。
個人の発明を扱うということは、特許制度を良く知らない人を相手にするということです。基本的な事項を説明をするのにも時間もかかります。誤解は生じやすいし、面倒だと思っていました。
しかし、がむしゃらに経験を積んで、ある程度時間がたつと、本来の「発明の面白さ」を忘れていたことに気が付きました。
発明とは、「この世に無いもの、面白いもの」です。
そのわくわく感を素直に味わいたい、そういう感情を大切にしたいと思うようになりました。
また、かつて自分が冷たくあしらわれた経験から、「これではいけない」、「特許を取りたい個人の方の力になりたい」という思いが芽生え、今に至っています。
このような理由から、個人の発明を、きちんとサポートしたいと思っております。
個人の発明は、面白い
個人の方の発明は、ピンからキリまでありますが、だいたいの場合、面白いです。
「あ、その手があったか」とちょっと驚くものばかりです。
いわゆる「ありそうで、無かった」というものですね。
単純そうで、意外性があります。特許がとれると素晴らしい特許権になります。
それが商品になって売れたら、もっと素晴らしいです。
そんな出来事に関われたら、幸せを感じますね。
以上のことから、個人の発明の特許出願を応援したいと思っております。
発明を他人に話すって、すごいこと
発明って、斬新なものです。
だけど、ちょっと自信がなかったりするものです。
うかつに話すと、「そんなの大したアイデアではないよ」と言われそうですよね。
自分のアイデアを人に話すのって、ちょっと恥ずかしかったりしませんか?
その気持ち分かります。
知り合いの社長さんがいます。
その社長さんは、アイデアがどんどんひらめく人です。
個人的な発明を商品化してヒットして、いまやちょっと名の知れた会社になっています。
その社長さんが言っていました。
新しい物を生み出すということは、必ず「抵抗」に会うものらしいです。
その「抵抗」を気にしないことが重要とのこと。
ちなみに、その「抵抗」は、新しい物を世の中に生み出して、さらに成功させるためには、「必要不可欠なもの」と考えても良いらしいです。
生みの苦しみ、というものですかね。
飛行機は、離陸するとき、どんどん加速しますが、そのときに空気抵抗を受けます。
抵抗がないと、上昇できません。抵抗が嫌だからと言って、加速を止めたら、飛べません。
抵抗は、上昇には必要不可欠のものなのです。
そう考えると、あなたが発明したときに受ける周囲からの「抵抗」は、「プラス」なものと捉えることができませか?
特許出願する必要があるのか悩んでいる方へ
「アイデアは守りたいけれど、費用をかけてまで特許を取る必要があるのか」と、悩みませんか?その悩む気持ちは、良くわかります。
悩みどころですね。
特許出願って、普通しないですよね。
個人で特許を取得したことがある人は、絶対的に少数派ですよね。
家の近所にはいないでしょうね。
だから、悩みますよね。
みんながやらないことをする、って悩みますね。
しかし、いつまでも悩んでいても仕方ありません。
面白い世界に行ってみませんか?
特許の関わる世界へ。
また、違う体験ができるかも知れません。
これまでの経験上、個人的に特許を取得した方は、とても嬉しそうです。きらきらと輝いている気がしますよ。
とても、前向きな人が多いですね。
特許の費用は、見合うか?
特許の取得には費用がかかります。
その費用は見合うでしょうか?
その費用を掛ける意味があるでしょうか?
特許権は、とても「強力な権利」です。
特許になれば、他人は実施ができなくなるのです。
実施権を売って、莫大な利益が得られるかも知れません。
そうなれば、特許の取得費用は簡単に回収できます。
そういえば、アップルを相手に特許侵害で争った個人発明家が、最終的には3億円の損害賠償を勝ち取ったという話がありましたね。iPodの操作に関する発明でした。
NHKドキュメンタリー逆転人生「最強アップルVS.貧乏発明家」で放送されていました。
--引用--
どん底にいた人たちが、知恵と工夫で大逆転した真実の物語を紹介。特許を侵害したとしてAppleを相手に法廷で争い、勝訴した個人発明家の逆転劇に迫る。自身のアイデアが「iPod」に使われたとする裁判は8年にも及んだ。極貧生活に陥りながらも闘った発明家がどのように逆転したのかを紹介。
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一方で、誰も利用しないような発明の特許だったら、特許取得の費用は、無駄になります。
これは、「賭け」なんでしょうか?
特許は、出願日を基準にして早い者勝ちです。
とりあえず特許出願しておけば、出願日が確保できます。
出願には、弁理士に依頼したとして、技術内容によりますが、20~30万円くらいかかります。
特許出願の費用が用意できない場合は、諦めるしかありません。
しかし、「その程度の費用は、用意できる」というのなら、どうでしょうか?
私は、諦めるのはつまらないと思います。
発明って、誰でもできるものではないですよ。
頭が良ければ発明ができる、というものでもありません。
学校の成績が良ければ、発明ができる、ということもありません。
「苦労すれば、発明が生まれる」、とも限りません。
科学的には証明はされていませんが、肌感覚として、ある条件が偶然に重なった場合に、発明が生まれるのだと思います。
それも、一瞬に。
アイデアの発想法として、こんなやり方があります。
何かに関してアイデアが欲しい場合は、その何かの背景や、現在の問題点を頭に入れて、ただ待つ。そうすると、ふとした瞬間に解決方法が浮かんでくる。あたかも、天から降ってきたように。
アイデアマンが共通して言うのは、
「アイデアは考えるのではなく、突然降ってくるものだ」、ということです。
ある意味、偶然。
何となく分かる気がします。
そんな偶然に、あなたは出会ったとも言えます。
「偶然なんかじゃないよ、私は努力して発明したんだ」と言われるかもしれません。
しかし、あなたは誰もできなかった発明をしたのです。
そんなあなたの存在自体が偶然です。稀有なことなのです。
そんな発明を、せっかくあなたがしたのですから、諦めないで欲しいです。
眠らせないで欲しいです。
特許出願だけはして欲しいです。
特許出願をすれば、発明が書類上に記録されます。歴史に残ります
「アイデアを教えます」では売れないが、特許権になれば売りやすい
あるアイデアを売ることを考えてみます。
誰かにアイデアを話して、それでお金を貰うのは、ほとんど不可能です。
アイデアを話す前に、
「良いアイデアがあるから買ってよ」と言っても、相手は、
「どんなアイデアか分からないのに、お金は払えないよ」と言うだろし、
アイデアを話した後で、
「良いアイデアでしょう?買ってよ」と言っても、相手は、内心では良いアイデアだなとを思ったとしても、
「そんなの誰でも思いつくよ。お金は払いたくないよ」と逃げてしまうでしょう。
アイデアとは、手品の種のようなものです。知ってしまうと大したことのないものと思われがちです。
アイデアを聞いてから、
「それは素晴らしいアイデアですね、それではお金を払いましょう」とは、なかなかならないでしょう。
そもそも、アイデアとは、曖昧なもの。
売るにしても、買うにしても、いったいどこまでのアイデアが販売の対象なのかが曖昧です。
しかし、アイデアを特許権にすればどうでしょうか。
特許権を売るのであれば、「何を売るのか」が明確です。
相手さえ見つかれば、簡単にできます。
特許権は、売っても良いし、売らずに使用料(ライセンス料)を貰うという方法もあります。
アイデアを売る方法として、特許を利用するのは、良い方法だと思いませんか?
一回の特許出願で大成功というのは難しい
もちろん、「一回の特許出願で、大成功」というのは難しいかも知れません。
特許出願はしたけれど、残念ながら、特許は取れなかったということもあるでしょう。
うまく特許は取得できたとしても、商品として人気が出なかったということもあるでしょう。
しかし、1度経験すれば、次はもっとうまくできるようになります。
良いアイデアが出やすくなります。
そして、ゆくゆくは成功するでしょう。
たとえ、特許の取得に至らなかったとしても、特許出願の内容は、誰でも閲覧できる状態で公開されます。半永久的に残ります。
あなたがその発明を思いついたことは、公に残るのです。
これって、すごいことじゃないですか?
あなたの名前が、歴史に残るのですよ。
面白くないですか?
そういえば、ソフトバンクの孫さんも、渡米時代に特許をとって、それをもとにした事業で大金を得ていたんですよね。一日5分、発明をすることに費やして、毎日「アイデアバンク」と呼ばれるノートに発明を書き記し、 そのアイデアの数は250以上だったそうです。
相談を早くした方が良い理由
「良いアイデアが思いついた。画期的な発明だと思う。」
「特許を取ったらいいんじゃないかな、と思ってはいるけれど、なかなか、具体的な行動を起こせない」
という方もいるのではないでしょうか?
しかし、早く相談に行った方が良いです。
早く相談に行った方が、最終的に、早く出願を完了させることができるからです。
相談の結果、特許出願するということになった場合に、相談時期が早ければ早い程、早く特許出願を完了させることができます。
相談が遅ければ遅い程、特許出願まで遅くなってしまいます。
特許は、早く出願した者が勝つようになっています。
「先願主義(せんがんしゅぎ)」といいます。
いくら早く発明しても、出願が遅かったら、同じ発明を早く出願した人には、勝てません。
Aさん:一年前に発明した。今日、特許出願
Bさん:一か月前に発明した。昨日、特許出願
Bさんの方が早く特許出願したので、Bさんに特許権が付与
→Bさんの勝ち!
早くした方が良い、もうひとつの重要な理由
早くした方が良いもう一つの理由は、「熱い気持ち」が大切だからだと思います。
熱い気持ちって、重要です。
物事を推し進めるには「情熱」が必要ですね?
「情熱」が、外部の「抵抗」を押しのけ、自分を前進させます。
「情熱」が、周りの賛同者を増やし、協力者を増やします。
一生懸命な人や、ひたむきな人に、心を打たれます。協力したい、関わりたいと思わせます。スポーツでも、ビジネスでも同じです。
あなたは発明をして、熱い状態です。
鉄は熱い内に打ちましょう。
情熱が冷めないうちに、どんどん進めた方が良いと思います。
私は、そういう人を応援したいです。
個人の発明に慣れている弁理士は、意外と少ない。
特許について身近に相談できる人は、なかなか居ないですよね。
たまたま弁理士の知り合いがいたとしても、個人の発明を興味を持って聞いてくれるとは限りません。
ほとんどの弁理士は、基本的に、企業をクライアントにしています。
個人を相手にしたことが無い弁理士が圧倒的に多いと思います。
したがいまして、個人の方へのアドバイスに慣れていなかったりします。
それは、仕方のないことです。
弁理士にも、得意、不得意があります。
そこは、ご理解頂きたいところです。
特許にすべきか実用新案登録にすべきか
発明を保護する方法として、「特許権」を取得する方法のほかに、実用新案登録をして「実用新案権」を取得する方法があります。
実用新案登録の対象は、「考案」と言われますが、「発明」とほぼ同じ意味だと考えてよいです。
特許?実用新案? どちらも「新規性」と「進歩性」が必要
特許の重要な要件として、「新規性」と「進歩性」があります。
「新規性」とは、その発明が「新しい」ということです。誰にも知られていないということです。
「進歩性」とは、容易に考えられたものではないということです。
いくら新しい発明でも、容易に考えられたというものでは、登録要件を満たしません。
実用新案登録でも、これらの要件は同じです。
特許?実用新案? 保護対象の違い
実用新案登録できる対象は、物の形状や構造等の組み合わせです。
例えば、傘、文房具、工具、スマホケース、機械のギア構造などは保護対象です。
一方、実用新案登録ができないものは、例えば、
・「おいしい牛乳の製造方法」、「排水の処理方法」、「金属板の加工方法」などの「方法の発明」;
・「スマホアプリ」、「会計ソフト」などのコンピュータソフトウエア関連の発明;
・薬品などの化合物の発明;などです。
これらは、実用新案権では保護はできませんが、特許権で保護できます。
特許?実用新案? 保護期間の違い
特許の保護期間は、出願から20年です。
実用新案登録の保護期間は、出願から10年と短いです。短いですが、10年で十分ならば、実用新案登録でも良いでしょう。
特許?実用新案? 審査の有無の違い
特許権は、特許の要件を満たすか否かの審査を経たのちに、付与されます。特許の要件とは、新規性、進歩性等です。すなわち、特許が取得できたということは、新規性、進歩性等の「権利の有効性」が特許庁により認められたということです。
一方、実用新案登録には、「権利の有効性」の審査はありません。書式に不備がなければ、登録され、実用新案権が付与されます。
実用新案権の行使には注意が必要
実用新案権は、「権利の有効性」について審査されずに付与されることから、他人の模倣に対して、すぐに「権利侵害だ、やめろ」と言うことはできないことになっています。他人に権利を行使するときは、事前に特許庁に「技術評価書」とう審査のようなことをして貰い、権利の有効性が認められた場合でなければなりません。
簡単に言うと、特許権は、審査を経て付与されるので、当初から「特許庁のお墨付きあり」の権利です。反対に、実用新案権は当初は「お墨付きなし」なので、権利行使の前に「お墨付き」を貰う必要があるということです。
すこし、ややこしいですね。
どちらがお勧めかと言えば、ケースバイケースですが、個人の方は、特許出願を選択すれば良いように思います。特許の方が、「権利の有効性」が審査されますし、一般的に「響き」が良いように思います。
実用新案登録は意味がないのかと言うと、そんなことはありません。中小企業などで、コストを抑えたい場合、他社をけん制したい場合など、上述の特徴を良く理解した上で利用するならば、良い選択肢だと思います。
意匠登録をお勧めするときもあります。
技術的なアイデアの場合は、特許か実用新案ですが、技術的というより形状(外観のデザイン)に特徴がある場合は、意匠登録をお勧めすることもあります。意匠登録をすると意匠権が発生し、外観のデザインを保護することができます。
アイデアの内容に応じて、最適な知的財産権を提案致します。
特許取得までのだいたいの道のり
特許取得までのだいたいの道のりを示します。
この図のように、
①発明が完成する。
②独自に先行技術調査をしてみる。弁理士に依頼してもOK。
③特許出願する。出願後、1年半で自動的に公開される。
④出願から3年以内に審査請求する。
⑤審査官から拒絶理由が来ることがある。それに対して反論する。
⑥審査官が納得すれば、特許査定が届く。
⑦登録料を支払い、特許権が発生する。
という流れになります。
出願しただけでは、審査は始まらない。
良く誤解されますが、特許出願をすれば、勝手に審査が始まるという訳ではありません。
「審査を始めてください」と特許庁に「審査請求」をしなければなりません。
特許出願から3年以内に「審査請求」をしなかった場合、その特許出願は取り下げられたものとみなされて復活はできなくなります。
早く特許を取りたい場合は?
「審査請求」をすると、審査の順番待ちリストに入ります。順番に審査されます。「審査請求」から、最初に審査官から何らかの反応(「特許査定」や「拒絶理由通知」)が届くまで、およそ1年です。以前は、数年かかっていましたが、最近はだいぶ早くなってきました。
それでも、1年程度かかるので、もっと審査を早くして欲しい場合は、「早期審査」を請求する方法があります。
「早期審査」を請求して、早期審査の対象として認められると、審査の順番待ちの最初の方に割り込ませてくれ、「審査請求」から2か月ほどで、審査官から最初の反応が届きます。
「早期審査」をうまく利用すると、特許出願から数か月で特許取得ということもあり得ます。
自分で特許出願できるか?
個人の方の中には、自分で特許出願してみる方もいるようです。何事にも挑戦するのは良いことですね。
しかし、特許出願の手続きはとても複雑です。特許出願の書類の作成は、豊富な経験がないと難しいです。経験がないと、拒絶理由が通知された場合に、審査官に理論立てて反論することは難しいと思います。のちのち、後悔すると思います。
私が弁理士だからそう言うという訳ではありません。分かっているから言うのです。
「発明は素晴らしかったけど、特許は取れなかった」とならないために、経験豊富な専門家を利用することをお勧めします。
「特許事務所」は、特許取得の手続きの代理をします。
特許取得の手続きの代理をするのが弁理士です。弁理士は特許事務所にいます。
あなたに合いそうな特許事務所を探しましょう。
「弁理士」は、守秘義務が課せられた国家資格です。
守秘義務のない「〇〇発明相談」に行くのは要注意です。
これは、ほんとうに良く注意してください。
守秘義務のない人がやっている「〇〇発明相談」に行くのは要注意です。弁理士ではない人が、発明相談をしていることがあります。
守秘義務のない人に発明を話してしまうと、「新規性」が無くなってしまうので、特許が取得できなくなってしまいます。注意してください。
弁理士は、弁理士法で、守秘義務が課せられています(弁理士法第30条)。
また、「発明クラブ」も気を付けましょう。
特許を取るような発明は、基本的にひとりでするものです。
「発明クラブ」で、いろんな人の助言を受けてしまったとします。
それって、誰の発明?、誰の権利?、みんなの権利だよねっとなって、後々トラブルの元になりかねません。
先行技術調査について
出願前の先行技術調査は自分でやってみると良いです。
発明がある程度具体的になったら、特許出願の前に先行技術調査をすると良いでしょう。
ネットで検索すると、特許文献を検索できるサイトはいくつか発見できますが、サイトによって蓄積されている文献が異なっていたりします。
あまり詳しくない場合は、特許庁のデータベースを利用するのが確実で簡単です。
インターネットで「Jplat」で検索するとヒットします。
キーワードをいろいろ入力して、関連しそうな先行文献を見てみましょう。
近似した先行文献はだいたいヒットします。
検索の仕方に問題がなければ、あなたの発明に近似している先行文献はだいたい見つかるものです。
でも、そこで諦めないでください。
一見すると近似していると思っても、良く読むと違いがあって、そこが特許のポイントになるかも知れません。
また、関連しそうな文献の記載を参考にして、異なる工夫を考えてみましょう。
あなたの発明を、さらに良いものに変化させるのです。
特許取得の可能性がぐっと上がります。
あまり早い段階の調査は、お勧めしません。
本屋さんの「特許の取得の仕方」などの本には、「まずは先行技術の調査です。」と書いてあるものもあります。
確かに、開発に膨大な費用がかかる発明の場合は、リスク回避のために、ある程度早めに調査をした方が良いこともあります。薬の発明など。
しかし、発明自体にはそんなに労力のかからないアイデア先行型の発明の場合、あまり早い段階で先行技術調査をすることは、お勧めできません。
アイデアがまだ曖昧で、発明として固まっていない段階で調査して、近い文献が発見されると、大抵の人は「やる気」を失くすものです。
発明の完成には、情熱が大切です。
情熱を奪われないために、あまり早い段階で、先行技術調査をする必要はないと思います。
私の特許事務所は、あなたをサポートできると思います。
ここまで、お読み頂きまして、ありがとうございました。
私たちの特許事務所は、個人の発明を多く扱っています。
個人の方の気持ちが良くわかります。
お問い合わせは、 弊所のサイトをご覧ください。
電話、メール、スカイプ、Zoomなどにより相談可能です。